『フォスフォフィライト』
(宝石日誌第90回 (2022年12月21日)より)
フォスフォフィライトは、数年前から、とある事情で人気と価格が爆上がりした宝石です。
【月人好みの薄荷の色】
フォスフォフィライト(Phosphophyllite 和名:燐葉石)は、産出量の少ない燐酸塩鉱物の一種です。
1920年に、ハインリッヒ・ハウプマンとヘルマン・シュタインメッツの2人の学者が、新種の鉱物として登録しました。
燐鉱石の一種であることと、劈開性が強く、ちょっとした衝撃で葉のように薄い細片に分かれてしまう性質とを表して、ギリシャ語の「燐(phosphorus)」と「葉(phyllon)」を含んだ名称を付けました。
なお「燐(phosphorus)」は、元々ギリシャ語で「光(phos)」を「運ぶもの(phoros)」という言葉に由来しています。「燐光(phosphorescence)」のイメージから名がついたのかもしれません。
かつては、ボリビアのセロ・リコ銀山から、宝石質のフォスフォフィライトが産出していましたが、1950年代末には採掘が終わっています。オーストラリア、アメリカ、ザンビアなどでも少量産出しますが、透明度の高いものはほぼボリビアでしか産出していなかったため、非常に稀少な宝石となっています。
モース硬度は3-3.5と軟らかく、また、名前のとおり割れやすいことから、加工は大変難しい石です。
色相は無色から薄緑色、青緑色を呈します。
いわゆるミントグリーンの宝石は、主な石ではトルマリンとアパタイトぐらいしかなく、その点では貴重な珍しい色合いの宝石と言えます。
(ミントグリーンの宝石は、トルマリン、ベリルや、数は少ないながらダイヤモンドなどにもあり、当時記載したほど珍しいものでもなさそうです。(2023.5.28追記))
一方で、屈折率、分散等の光学特性は低く、照りや輝きには特筆できる要素はありません。
さらに、非常に脆く、傷つきやすいという欠点を有しており、従来は一部のコレクター以外には名前すら知られていませんでした。
その状況を大きく変えたのは、市川春子さんの漫画「宝石の国」です。
登場人物は、宝石の名前と、その宝石に似た性質を持つのですが、主人公が薄荷色の髪の“フォスフォフィライト”でした。
漫画の人気が高まるにつれて、フォスフォフィライトの価格も高騰し、「宝石の国」登場以前からみると市場価値は10倍以上になったと言われています。
今では1ct当たり百万円を超えることが当たり前の、大変高価な宝石となっています。
自分では所有していませんので、レアストーンに強い優美堂さんの商品写真へのリンクを記載します。こちら
※フォスフォフィライトの合成に成功したとの報があり、実物を入手しました
⇒ こちら(2023.5.27追記)