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『宝石情報の集め方』 

宝石日誌番外編 (2022119日)より)

さて、本日の宝石日誌は番外編で「宝石情報の集め方」です。

宝石に関する情報を書くに当たって、どのような情報を参考にしているか、いわば作成の舞台裏についてお伝えします。

 

【複数ソースの確認】

宝石の情報を得たいとき、私は文献と和洋のネット情報を参照しています。

まず、基本的なポイントを、信頼性が高い、しっかりと書かれた日本語の本で押さえます。
よく参照しているのは、ナツメ社の「起源からわかる宝石大全」です。

2022年に国立科学博物館で開催された「宝石」特別展にあわせて編まれた本で、現在の最新情報が幅広く書かれています。

 

次に見るのが、実際に宝石を販売している方々がまとめているネット上のサイトです。

売り手の経験を踏まえた、実際に宝石を買うときに役立ちそうなエピソードが、学術面の情報とはまた違って、大いに参考になります。
Karatz
さんのホームページの「宝石図鑑」のページがお勧めです。
https://karatz.jp/gemstone-dictionary/

 

最後に海外、特にアメリカの団体などが掲載しているサイトで、集めた情報の真偽・異説の有無や、興味深い追加情報がないかについてチェックします。

日本では宝石について研究は、地質学のごくごく一部、隙間のような位置づけというイメージがあります。
それに対してアメリカでは、学問としての宝石学(gemology)が確立しています。各種のサイトの充実度は高く、おそらく情報の正確性も高いのだろうと思います。

色々ありますが「gemstones.com」(https://www.gemstones.com)などをよく見ます。

 

【情報の取捨選択】

こうして複数のソースの情報を照らし合わせると、書かれている情報がそれぞれ違っていることがよくあります。
例えば先日のラピスラズリの話でいうと、語源についての記載に違いがありました。具体的には、以下のとおりです。


宝石大全:記載なし

日本のネット情報:産地を表すペルシャ語が起源(日本語版ウィキペディアの記述も同じ)

アメリカのネット情報:サンスクリット語で「空」または「天の石」という意味の言葉が、ペルシャ語、アラビア語を経て伝わり、変化したもの(英語版Wikipediaの記述も同じ)


この中では、英語のサイトで、サンスクリット語からの言葉の変化を、それぞれの言語で表示して推移を説明しているものが、情報の信頼性が高いと考えました。

他にも、ラピスラズリの鉱物としての性質そのものについての説明に相違がありました。

日本語版ウィキペディア:複数鉱物の固溶体であり、ただの集合体ではない。
(固溶体:複数の鉱物が、元の結晶の形を残したまま溶け合ったもの)

上記以外:複数鉱物の集合体(英語版Wikipediaも同じ)

この点については、

@固溶体であると主張しているのが日本語版ウィキペディアだけであること、
Aラピスラズリは地表近くで生成され、高温環境にさらされることがないのに、鉱物がどうやって溶け合うことができるのかイメージが湧かなかったこと、

から日本版Wikipediaの「固溶体説」は採りませんでした。

もしかすると、今後の研究で定説が覆ることがあるかもしれませんが、現時点で日本語版ウィキペディアの記載をそのまま転載することはためらわれました。

 

宝石だけに情報も玉石混淆ですが、さまざまな情報にあたって知見を増やすこと自体が面白いですし、どれが正しいのか考えることもいい頭の体操になります。

そういった面でも、なかなか良い趣味なのではないかと思っています。