『黒玉(ジェット)』
(宝石日誌第16回 (2022年9月14日)より)
第16回の後半では、黒玉(ジェット)についてお伝えしたいと思います。
ジェットは、琥珀よりもさらに古い中生代ジュラ紀以前の樹木が化石となったものです。
琥珀と違って、樹液ではなく樹木自体が地中で変化したものです。

ジェットの中には、遡ること3億6千万年前の木もあるそうです。
まだ哺乳類も恐竜も姿を現していないような果てしない過去にも、植物は地面から芽を出し、せっせと太陽光を浴びて光合成をして育ち、そして人知れず倒れていたのだと考えると、圧倒されそうな気持ちになります。
【ジェットの利用】
炭素を多く含むジェットは黒く、研磨することによって、ピアノのように黒く滑らかな表面が光を反射するようになります。
先史時代の遺跡からも磨かれたジェットが出土するそうで、人類との付き合いはとても長いようです。
【モーニングジュエリー】
この半貴石が最も脚光を浴びたのは、19世紀前半、大英帝国でのことでした。
当時の君主ヴィクトリア女王が、配偶者アルバート公に先立たれ、その後40年もの間、喪に服するために、宝石の着用を避け、黒いジェットを身につけていたという話が残っています。
亡き人を悼む気持ちで身につける宝石や装飾品を「モーニングジュエリー」(「朝」ではなく「嘆く」の”mourning“)と言いますが、当時のイギリスでは、ヴィクトリア女王の振舞いに合わせて、ジェットで身を飾ることが大流行したそうです。
現代イギリスでも、もしかしたら今度は、エリザベス二世女王への弔意を示すために、ジェットを身につける方が増えるかもしれませんね。 (2023/2/13追記:エリザベス二世崩御後、特にイギリスでジェットが流行るということはなかったようです。)