『アパタイト』
(宝石日誌第47回 (2022年10月19日)より)
アパタイト(apatite)は一鉱物の名称ではなく、カルシウムの燐酸塩鉱物(フォスフェート)に属する、特徴を共有する鉱物グループを指します。
歯の成分の一つとしても知られており、日本ではCM等の影響もあって、歯磨き粉を思い浮かべる方が多いのではないかと思います。

【ポップで親しみやすい宝石】
和名は成分を表す「燐灰石」です。
モース硬度は5と低めです。これはガラスと同程度かやや下回る硬さで、砂埃で傷つくおそれがあるレベルです。宝石としては柔らかい方となりますので、日常の取扱いにはやや注意が必要です。
アパタイトの最大の特長は、カラーバリエーションの豊富さと、それぞれの美しさにあると思います。
青や緑のものが代表的で、多く流通していますが、他にも無色、黄色、ピンク、紫色、褐色、灰色など様々な色があります。


そのうえ、多色性、シャトヤンシー(キャッツアイ)効果、変色性など、光学的な“遊び“も盛り沢山で、この石一種類でもなかなか興味深いコレクションが作れそうです。
なお、アパタイトの中でも珍しい色については、別名で呼ばれることがあり、黄緑色の「アスパラガスストーン」や深い青緑色の「モロキサイト」など、一見アパタイトとわからない名前の石もあります。
【財布に優しいパライバ系】
三大稀少石の一つのパライバトルマリンは「ネオンブルー」と呼ばれる輝く青の発色で人気があります。
知られている中では、アパタイトだけに同じネオンブルーの色を持つものがあり、こうした石には、“パライバカラー”といったフレーズがつけられて売り場に並びます。
パライバトルマリンはかな〜り値の張る石ですが、同じような輝きを持つアパタイトは、柔らかさにこそ多少の注意は必要なものの、遥かに廉価で手に入りますので、人気のほどもわかります。
ご参考にブルーアパタイト2石と、パライバトルマリン1石の写真を添付しますので、見比べてみてください。



【月の光に導かれ】
アポロ計画で得られた月の石には微量のアパタイトが含まれていることが確認されていました。
その後の研究と再分析の結果、月にあるアパタイト等の鉱物に水酸基として含まれる水の量は、従来の想定より100倍も多いことが判明しました。
月の石を分解してアパタイトを集め、太陽電池の電力で水を分離する仕組みが立ち上がれば、月面で恒常的に水を得られるようになります(※)。
「第六番目の大陸」として人類が月に地歩を固めていくうえで、アパタイトは思わぬ福音となるかもしれません。
(※月の両極のクレーターの影に、氷の水の存在が確認されており、こちらも有望な水の供給源候補です)
【新しい価値観】
以前8月に、宝石ショップKaratzの若い店員さんとお話をしたとき、彼女のいち推しの宝石はアパタイトだと教えてくれました。
「パライバトルマリンにも美しさでは引けを取りません」
「最近はアパタイトのアクセサリーも増えてきたんですよ」
と、熱をこめて語ってくれました。
パライバトルマリンの代用品ではなく、アパタイト自身の魅力を発見し、これが一番だというファンがいることは、何だか頼もしいことだなと感じました。
新しい感性の人が、“宝石沼”の世界を、より豊かでより深いものに変えていってくれそうで、これからが楽しみです。
【本日のお散歩】
昨夜までの雨もようやく一段落したようです。
朝方だいぶ冷え込んだので、散歩は少し時間を遅らせて、ルビーはセーター装備のうえで出かけました。
久しぶりのセーター着用で、着るときは少し嫌そうでしたが、やっぱり暖かい方が調子がいいようです。
セーターなしの昨日と違って、途中で帰らずに、ぐるっといつものパトロールコースを一周しました。
