『スフェーン』
(宝石日誌第54回 (2022年10月27日)より)
追記:宝石日誌第142回は「グリーンスフェーン」(20233/15)
スフェーンは、従来あまり知名度は高くなかったと思いますが、2021年12月に、新たに7月の誕生石に追加されたことで注目度急上昇中の宝石です。
宝石としては脆く柔らかいという欠点がありますが、ダイアモンドをしのぐきらめきとファイア(分散光)が美しく、着実に人気が高まってきています。
【鉱物情報(魅惑の光学効果)】
スフェーン(Sphene)は、カルシウムとチタンを含有する珪酸塩鉱物です。
結晶が楔のような形をしていることから、ギリシャ語の楔(Sphenos)を元に命名されました。和名も同様に「楔石」です。
スフェーンは、チタンを多めに含有するチタナイトという鉱物グループの中で、唯一宝石質のものが産出する鉱物です。
そのため、鉱物学上の鉱物名はチタナイトとするのが正確ですが、宝石学上はスフェーンを鉱物名とすることが多く、鑑別書の記載もまちまちです。

モース硬度は5〜5.5と低めであり、さらに特定方向の衝撃への弱さを示す劈開性が「2方向に明瞭」と強く、取扱いには十分な注意が必要です。
光学的には、次の3つの特性が混在して、興味深く魅力的な性質を示しています。
@分散性
光の分散率が0.051と、ダイヤモンド(0.044)よりも高く、ファセットカットが施されたスフェーンに光を当てると、強いファイア(分散光)を発します。
このためスフェーンは、ダイアと同様に、ブリリアントカットを施すことで、石の魅力を最大に引き出せるとされています。
A複屈折
複屈折が大きく、石を通して見た文字や、石自体のファセット稜線が二重に見える、ダブリングと呼ばれる現象が現れます。
B多色性
見る角度によって異なる色に見える「多色性」が強く出ます。
【カラーバリエーション】
スフェーンの主な色は、黄色、緑色、オレンジに褐色です。その他稀に、無色、ピンク、赤、青、黒などが見られることがあります。


国際宝石科学研究所(IGS)の調査によると、世界的に人気なのは、分散効果がはっきりと確認できる薄黄、薄緑などの明るい色合いです。
ただし、日本はこの例外で、市場では濃い色合いのものが好まれるようです。
なお、クロムを含有してエメラルドのような鮮やかな緑色を発色するものは、「クロムスフェーン」との商業名をつけて別格で取引されており、メキシコのバハカリフォルニア州産のものが最高品質とされています。
【見分け方のポイント】
色付きのキュービックジルコニア(CZ)は、きらめきと分散効果がスフェーンと似ています。
本物のスフェーンかどうかを判定するには、次の点に着目します。
・ダブリングが見られるか。
スフェーンは、CZにはない複屈折があるので、石の反対側の文字等が二重に見えるダブリング現象が見られるか確認します。
・UV蛍光
スフェーンにはUV蛍光性はないので、紫外線を当てて蛍光を発したものはスフェーンではありません。
・稜線の鋭利さ
CZは硬度8.5とスフェーンよりもかなり硬いため、カットしたときのファセット稜線がより鋭利になる傾向があります。 (それはCZの方が宝石として優れているということになるのでは・・?)
【日常の手入れ等】
スフェーンは傷つきやすく、欠けやすい石です。アクセサリーにするときは、ぶつけて壊しやすい指輪にするのはできれば避けて、覆輪留めなど石に負担をかけにくい加工でネックレス等に仕立てる方がいいでしょう。
また、酸性の飲料や汗などは石を傷めますので、使用の都度、セーム革やクリーニングシートなどで表面を軽く拭き取ることも大事です。
○グリーンスフェーン
スフェーンは、軟らかく脆い石です。
イエローは持っていましたが、グリーンが見当たらなかったので、ちょうど値頃なものがあったネットオークションで入手しました。

スフェーンはダイヤをしのぐ屈折率と分散度で知られています。
スファレライトとは名前も鉱物としても何も関係はないのですが、少しイメージが重なります。
手持ちの黄色と並べた写真も撮ってみました。
ちょっとインクルージョンが多く、カットも甘めですが、値段を考えると許容範囲です。
【本日のお散歩】
ほどほどにいい天気です。
ルビーはいつものとおり、嬉しそうにあちこち匂いを嗅ぎながら歩きました。
ちょっと遠くまで足を伸ばしたがったのを、私が寒かったので、引き止めて家に帰りました。

午前中のうちに、日の当たるデッキで日光浴も楽しみました。
