『ガラス』
(宝石日誌第45回 (2022年10月16日)より)
ウランガラス追記 第112回( 2023年1月19日)より
宝石として扱われるガラスには、次の2つのパターンがあります。
1.自然に形成されたガラス質の宝石
2.宝飾品等のための人造ガラス
3.高価な宝石のイミテーションとしてガラスで作られたもの
以下それぞれをご紹介します。
1.天然ガラス
【隕石衝突の産物】
モルダバイトは、隕石の衝突によって形成された“テクタイト”という天然ガラスの一種です。

テクタイトは、地上への隕石の衝突時に、鉱物が高温と衝撃でガラス状に固まったものとされています。
従来は、その成分は隕石の中にあったもの、即ち宇宙由来と考えられていました。(余談ですが「宇宙戦艦ヤマト」の艦橋の窓は、“強化テクタイト”製という設定でした)
最近の研究で、テクタイトの成分は宇宙由来ではなく、隕石が落下した際に地表にあった物質が溶かされ、飛び散りながら冷え固まったものだろうと考えられるようになりました。
人間が砂を溶かしてガラスを作るように、隕石衝突時の熱と衝撃が、ほぼ一瞬のうちにガラスをつくったわけです。
テクタイトは発見地により名前が異なり、多くは黒い結晶となりますが、モルダバイトは透明度のある緑色をしており、文字どおり異色の鉱物です。
モース硬度は5〜6で、衝撃に弱く、欠けやすいのもガラスの特徴どおりです。
モルダバイトは、およそ1,500万年前に、現在のモルダウ河上流付近で起きた隕石衝突で形成されたと考えられており、名称もモルダウ河にちなんでいます。
成分がガラス質ですので、モルダバイトはイミテーションの作成が簡単です。市場には既にかなりの量の偽物が出回っていると言われます。
真偽判定に必ずしも決め手はないらしく、購入にあたってはしっかりと経路が追跡できる店で購入することが望まれます。
テクタイトには他に黄色みを帯びた「リビアングラス」もあり、コレクターの人気を二分しています。
2.人造ガラス
一例として、ヨーロッパでかつて愛された「ウランガラス」を取り上げます。
ウランガラス (Uranium glass / Vaseline glass) は、0.01%程の極々微量のウラニウムを着色材として加えたガラスのことです。
ガラスが明るめの緑色ないし黄色に染まり、紫外線を当てると美しい燐光を発するのが特徴です。
19世紀前半のヨーロッパが発祥で、ガラスに緑や黄色の色をつける素材としてウラニウムが使われました。
その時代に紫外線灯はありませんが、夜明けの直前などの時間は空の紫外線量が増加するので、そういった時間帯にぼうっと燐光を放つことから、その特別な性質がわかったのだろうと言われています。
ウランガラス製のコップや花瓶、アクセサリーなどは、ヨーロッパおよび米国で大量に製造されました。
現在では放射性物質の取扱いに関する規制が厳しくなったことから、ほとんど新規生産はされておらず、過去の作品がアンティークとして出回ることが多いようです。
そうなるとウランガラスは体に悪いのか気になるところですが、100gのウランガラスに含まれるウラニウムの放射性物質量はおよそ2,400ベクレル程度と極めて微量です。
そもそも人間は、体内に含まれるカリウム同位体などにより平均して10,000ベクレル超の放射性物質量を持っています。100gのウランガラスでも、発する放射線量は人一人の5分の1程度であり、まず何も危険がないと言えます。
最近は紫外線蛍光性のある宝石の人気が上がっています。
ウランガラスは宝石とは言えませんが、蛍光性の宝石の人気上昇と合わせて、ウランガラスの復権も見られるかもしれません。
3、イミテーション
【鑑別書付きのガラス】
高価で稀少な宝石のイミテーションをガラスで作る場合があります。
ある時ネットオークションで、宝石鑑別書付きのガラスが売られていたので、興味本位で落札しました。


3.5ctと大粒で青緑色の、スクエアカットされた美しい石でした。
雰囲気はグリーントルマリンに近く、インクルージョン(内包物)が全く見られず、色むらや濁りもなく発色は全体に均等であるなど、これが天然石なら相当いい値段がするような石です。
鑑別書があるのは、購入した人が疑問に思って鑑別を依頼したら、ガラスでできた偽物であると判明してしまったものではないかと想像します。
【カラーチェンジガラス】
ガラスのイミテーション石の中には、照明によって色が変わる変色性を持たせたものもあります。
手元には「人工ズルタナイト」として売られていたカラーチェンジガラスがあります。

茶色っぽい紫色が、白熱球のライトで赤紫に変わりました。
ズルタナイトは変色性のある宝石なので、似せるためには変色性のあるガラスを用いる必要があったものと思われます。
【ダウト!】
これまで買ったルースの中にも、値段やクリア過ぎる品質などから考えて、合成かガラス製ではないかと考えているものがいくつかあります。
・スリランカ産とのふれ込みの、やけに明るい青で、全く濁りのない大粒のサファイア

・「天然ルビー」との海外の鑑別カードが付いているが、記載の鑑別機関が実在しないと思われるルビー

・「非加熱」との記載があったが、よく見るとどこにも「天然」とは書かれていなかった、傷一つない透明なエメラルド

などは有力な候補と思われます。
個人的に、合成石や人造宝石、イミテーションストーンにも興味があるので、面白がって「怪しい」宝石を購入しています。
なお、ガラスのイミテーションを見分ける方法として、「比熱が違うので触ると冷たい」「ガラス特有の気泡が含まれている」ことがポイントと言われていますが、正直手元の石はそれでは判別できませんでした。
面白がって買うならいいですが、偽物をそうと知らず買うのは絶対に避けたいものです。
そのためにも、本当にほしい宝石を買うときは、信頼のおける店で、現物を見て買うことが大事だと思います。
【本日のお散歩】
少し気温が戻ったようで、湿気が高いせいか、歩くと少し暑さを感じます。
ルビーといつものコースをパトロールしてきました。異状なしです。
