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『ベキリーブルーガーネット』 

宝石日誌第39回 (20221010日)より)

【青いガーネットの謎】

シャーロック・ホームズの物語の中に「青いガーネット(または“青い柘榴石”)」という作品があります。

青い宝石がお話の焦点となっているのですが、その正体は謎のままです。

小説が書かれた19世紀には、青いガーネットは存在しないとされていましたので、あり得ないミステリアスな宝石というイメージだったのだろうと思います。

青いガーネットを一目見たいという人の思いに応えようとしたのか、20世紀には、人造のガーネットに微量元素のコバルトを加えるなどして、人工的に青いガーネットが造られました。

(写真はイットリウムとアルミニウムの複合酸化物をガーネット様の結晶とした人造宝石「YAG」です。名前はそれぞれの頭文字を取っています。)

 

この話で私は薔薇の花を連想しました。

薔薇は自然状態では青の色素を持たないため、最近まで青いバラは存在せず、存在しない青い薔薇の花言葉は「不可能なこと」とされていました。

百年以上にわたって、多くの育種家が、紫色の薔薇を品種改良する等の方法で、可能な限り青い薔薇の作出を目指しました。

またときに花屋が、白い薔薇の切花に青い塗料を振りかけて、束の間の青い薔薇を人々に提供することもありました。

日本のミスター・ローズと呼ばれた育種家の故 鈴木省三氏は生前、

「青いバラができたとして、それが本当に美しいと思いますか」

とインタビュアーに問いかけたことがあったそうです。

人の手で生み出された、幻の青いガーネットを見たときに、人々の心をどんな思いがよぎったのか、聞いてみたい気がします。

 

そんな風にかつては幻だった青いガーネットが、ごく最近の1990年代後半に、マダガスカルのベキリー鉱山で発見されました。

落ち着いた透明感のある青が印象的な石で、光の加減でわずかにグリーンがかって見えるときもあります。

座る, 横, ウニ, ブルー が含まれている画像

自動的に生成された説明

微量元素として含まれるマンガン、バナジウム、鉄などのバランスが、複雑なブルーグリーンのニュアンスになって現れているようです。

そして、「ベキリーブルーガーネット」と呼ばれるようになった青い宝石は、その多くが変色性を持っていました。

ブラス, 座る, 半分, テーブル が含まれている画像

自動的に生成された説明

変色性のあるベキリーブルーガーネットの場合、自然光の下では青色〜青緑色ですが、白熱球のライトを当てると紫〜赤紫色に変化します。

ガーネットは元々内包物の少ない鉱物で、ベキリーブルーガーネットの冴え冴えとして濁りのない青は、ブルーサファイアなどにも引けを取りません。

加えて、アレキサンドライトを思わせる変色の妙もあって、興趣のつきない個性的な宝石です。

個人的に「次に来る宝石」の候補の一つだと思っていますが、例によって大粒の石がなかなか採れない上に、ベキリー鉱山での産出は既に枯渇し、閉山してしまったとの噂もあります。

宝石店で話を聞くと「枯渇した」「今後は手に入らないかも」と言われるのが、ある種お約束ではありますが、ベキリーブルーガーネットの供給が限られていて、今後あまり価格が落ち着く見込みが持てないというのは事実かと思います。

ご興味があれば、早めに店頭で実物をご覧になることをお勧めします。

 

【その他のカラーチェンジガーネット】

ベキリーブルー以外にも、変色効果のあるガーネットがあります。

種類としては、赤系のパイロープガーネットと、茶色系のスペサルタイトガーネットが「固溶体」という形で混じり合った石に、変色性を持ったものが多く見られるとのことです。

変色のパターンも一様ではなく、赤⇔オレンジ、赤⇔赤茶色、青紫⇔ピンク、紫⇔ピンクなど、様々な色変わりを見せるようです。

価格的には、カラーチェンジフローライトほど安くはないものの、ベキリーブルーに比べると比較的廉価で、コレクションに加えやすい石だと言えます。

 

 

【本日のお散歩】

昨夜降っていた雨も朝には止んで、いつものとおりルビーと散歩に出ました。

寒くもなく暑くもなく程よい気候で、無難に近所をパトロールしてきました。