『ペリドット』
(宝石日誌第65回 (2022年11月17日)前半より)
ペリドットは、「オリビン」という鉱物グループに属する石です。
オリビンという名は聞き覚えないかもしれませんが、マグネシウムや鉄を成分とする珪酸塩鉱物の「橄欖(かんらん)石」のことです。
石の緑色がオリーブの木を連想させることから「オリーブ石(Olivine)」と名付けられたとされています。
オリビンからできた宝石には、
@ペリドット
Aパラサイトペリドット
Bフォルステライト
があります。
【ペリドット <夜会のエメラルド>】
オリビン(橄欖石)には、マグネシウム主体の苦土橄欖石と、鉄主体の鉄橄欖石があり、おおむね前者9対後者1の割合で成分が混ざり合って結晶化したものがペリドット(peridot)です。


紀元前から宝飾に使われており、その名前はアラビア語で「宝石」を意味する「Faridat(ファリダット)」から来ている等、いくつかの説がありますが、既に定かではありません。
なお、「ベルセルク」に登場する魔石ベヘリットとは、特段の関係はないようです(作者逝去後の今になって読み始めました)。
モース硬度は7と十分な硬さを有しており、若干の劈開性はあるものの、加工しやすく使い勝手のいい石であり、ハンドクラフトも含め広く利用されています。
光学特性としては、強い複屈折性があります。光を波長によって異なった角度で屈折させる性質で、ペリドットを通して見た文字などの像は二重に見えることになります。
地球🌏のマントルのうち、比重の軽い上層部は、大半がオリビンで構成されていると推測されています。
これは、山脈から海底まで、地球上の全ての地殻を合計したよりも、はるかに大量のオリビンが存在するということであり、その結晶であるペリドットについては、それほど枯渇の心配はしなくて良さそうです。
(地下にあるものをどう取り出せばいいのか、という問題はありますが)
結晶中に含まれる鉄によってペリドットは緑色を発し、その量によって、明るい黄緑から暗緑色までの幅を見せます。
照明が暗かった古代にあって、暗い中でも目立つ明るい緑のペリドットは重宝されたようで、ローマ人は「夜会のエメラルド」との別称を与えています。
また、そもそもエメラルドと混同されることも多く、クレオパトラがエジプトで採掘させていた“エメラルド”は、実際にはペリドットだったのではないかとも考えられています。
埋蔵量が豊富なこともあって、ペリドットは、宝石の中でも特に安価に入手できるものの一つです。
【パラサイトペリドット <宇宙からのメッセージ>】
地球に豊富に存在するオリビン(橄欖石)は、全宇宙的にもありふれた物質のようで、地表に届く隕石の中には、ときどきペリドットを含むものがあります。
隕石にはいくつかのグループがあり、ペリドットを含むものはパラダイス銀河、もといパラサイト隕石と分類されていることから、宇宙由来のペリドットを「パラサイトペリドット」と呼んでいます。
なおこの“パラサイト”は、「寄生者(parasite)」ではなく、隕石の発見者パラス博士の名前を取った「パラサイト隕石(pallasite)」のことを指します。
ペリドットが隕石に寄生して密かに地球に飛来している・・ということではありません。ここは誤解しがちなポイントですので、覚えておくといいと思います。
宇宙由来のパラサイトペリドットも、成分は地中由来のペリドットと同じですが、
0.1ctを超える大粒のものがほとんど存在しない、
インクルージョンのために褐色がかったものが多い、
内部にクラックがあることが多く割れやすい、
といった特徴があります。
カットを施した宝石質のパラサイトペリドットには稀少性があり、目を疑うほど高価なのでご注意ください。