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『アメシスト』 

 

宝石日誌第66回 (20221118日)より)

アメシストはとてもよく知られた宝石です。

【酒神御用達の不酔石】
古くから宝石として珍重されて来た石です。


アメシスト(Amethyst  和名:紫水晶)の語源は、ギリシャ語の「methy(酒)」に否定辞の「a」が付いた「amethy(酒に酔わない)」であると言われます。
これは当時、この石で作った杯で酒を飲めば悪酔いしないと信じられていたことによります。

元になる神話にはいくつかバリエーションがありますが、ざっくりまとめるとこんな感じです。

・酒神ディオニュソス(以下「甲」と言う)はいつものとおり飲んでいたが、色々あって甚だ虫の居所が悪かった。

・そのとき、アメシストという名前の乙女(以下「乙」と言う)が通りかかった。

・甲は悪意をもって、飼っていた猟犬を乙にけしかけた。

・切迫した身の危険を感じた乙は、信仰する月の女神アルテミス(以下「丙」)に加護を祈った。

・丙は乙を守るために、乙を透明な水晶💎に変えてしまった!

・その変身劇を目の当たりにした甲は、突然悔恨に襲われ、謝罪の意思を示すために、水晶💎に、いつも持ち歩いている葡萄酒をぶっかけた。

・すると不思議なことに、透明だった水晶は、美しい紫🔮に色を変えた。

・謝罪が受け入れられたと感じた甲は、やっぱ悪酔いはいかんなと気づき、自分への戒めとして目の前のアメシスト🔮で杯をつくり、以後愛用した。

 

なんかひどく命の軽い時代のようで引きますが、そんな伝説から、アメシストを身につけていると悪酔いしない(最後まで楽しく飲める)とされ、愛飲家が好んで身につけたようです。

ちなみにアメストと表記されることも多く、それも間違いではないのですが、日本ジュエリー協会等の団体が「アメシスト」で整理しているので、ここではその表記にならいます。


【紫色の永遠のチャンピオン】
中世までは、ルビーやエメラルドと同じくアメシストは極めて貴重な宝石でした。
新世界で新しい鉱山が発見され、産出量の増大と価格破壊が進み、現在では安価で身近な宝石になりました。
(デビアス社がなければ、ダイアモンドも20世紀初めに同じ運命をたどったことでしょう)

カジュアル化が進んだとはいえ、その実力に衰えはなく、紫の宝石でアメシストに匹敵する石はいまだ現れません。
サファイア、ガーネットやゾイサイトなどの一部に、パープルサファイアなど紫のものがありますが、量の面でも、色の深さ、安定性という面でも、アメシストには遠く及びません。

紫の代表として、アメシストは大きな存在感を保ち続けています。



【宝石としての特性等】
アメシストは二酸化珪素が結晶になった水晶の一種です。
モース硬度は7と水準以上で、劈開性もありません。加工に適しており、ハイジュエリーからカジュアルアクセサリーまで幅広く活用されています。
例えば、AGATHAという宝飾メーカーは、テリア犬を会社のマークにしているのですが、そのテリア犬がアメシストを抱えたような愛らしいネックレスを作っており、付けもしないのに買ってしまいました。


なお、アメシストの加工性、耐久性に問題はないのですが、欠点もあって、長く紫外線を浴びていると色が薄くなって(退色して)しまいます。
日の当たる場所に放置しないなど、日光には注意する必要があります。

アメシストは入手しやすい石ですが、宝石としては、色むらのない濃い紫で、透明度の高いものが特に価値が高いとされています。
加工性がよく廉価なためか、さまざまな細工を施したものもよく市場に出ています。

アメシストには淡いラベンダー色から、石の底が見通せないほどの濃紫色まで、幅広い色合いがあります。
中には紫以外の色を見せるアメシストもあります。

【色彩を持たない水晶の変貌】

そもそもアメシストはなぜ紫色をしているのでしょうか。

 

アメシストは二酸化珪素(SiO2)の結晶です。結晶そのものは本来無色なのですが、含まれるごく微量の鉄が珪素に置き換わることによって、色がつくようになります。

ただし、鉄を取り込んだだけでは、まだ無色のままです。

 

長い年月地中で自然放射線を受け続けることによって、酸素原子が鉄イオンの電子を取り込んでしまい、鉄イオンの方は電子を失った不安定な状態になります。

この状態の鉄は、光のスペクトルの黄色を吸収し、その補色である紫色は通過させるために、外から見たときに紫に見えるようになります。

 

日光に当たって色が褪せるのはこの逆の現象です。

鉄イオンが日光に含まれる紫外線を受けて元に戻ってしまうために、色が薄くなってしまうものです。

 

なお、アメシストを加熱すると、鉄イオンが電子を一つ取り戻して安定しようとする働きが起こります。

この結果、それまでとは逆に、スペクトルの黄色を通過させ、紫を吸収するようになります。外から見た色は黄色です。

このとき、鉄イオンの状態が安定するので、紫外線で褪色することもなくなります。

黄色の水晶シトリンの大半は、実はこのようにアメシストを加熱して作られています。

 

 

【アメトリン】

紫色の水晶アメジストと黄色の水晶シトリンは、上記のとおり全く同じ鉱物で、含まれている鉄原子の状態によって色が異なっているだけです。

 

この二つが一つの結晶になっているのが「アメトリン」です。動物の雑種みたいなわかりやすいネーミングですね。

通常二色が混ざった宝石は「バイカラーサファイア」などとバイカラー+宝石名で呼ばれますが、アメトリンは比較的ポピュラーなためか、固有の名称がついています。

黄色の部分は安定していますが、紫の部分は紫外線で褪色するので、アメシストと同じように日光の下に放置しないよう注意が必要です。

 

アメトリンは供給も安定しているため、比較的安価に入手できます。結晶の中央で色がはっきり分かれているものに人気があります。

 

 

【グリーンアメシスト】

加熱して黄色になったアメシストをさらに加熱すると、鉄原子が初期の状態に戻ってしまうため、結晶は無色または白色になります。

ところが、一部の産地のアメシストは、無色や白ではなく、淡いグリーンになることがあります。

こうして生まれたのが「グリーンアメシスト」です。「プラシオライト(prasiolite)」とも呼ばれます。

加熱処理で作ることができるため供給は安定しており、安価で入手できます。

 

 

【スコロライト】

白いミルクのような質感があり、ごくごく薄い紫色が残った水晶です。

これもアメシストの加熱処理を進めた結果できるものです。

供給が安定していて、安価で入手できます。

 

 

紫のアメシストの色には秘密があり、鉄原子のイオン状態を変化させることで、人為的に異なる色に変化させることができるのは興味深いです。

 

 

 

【本日のお散歩】

今日も快晴でした。

朝散歩はルビーの気分の赴くまま、遠い方の公園まで出ばりました。

 

先週も見かけたマンション入り口のバラが綺麗でした。