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『スピネル』

(宝石日誌第2325回 (202292123日)より)
追記:ジェダイスピネル(2023228日)

スピネルは、古くから宝飾品に使われてきた石ですが、ルビーなど他の宝石と混同されることが多かったせいか、スピネル自体の知名度はあまり高くありません。
2021
12月から新しく、8月の誕生石に選定されましたので、これからファンも増えていきそうです。

【スピネルとは】
ダイヤモンドと同じ八面体の結晶の形で産出されることが多く、この結晶の形からラテン語で棘(トゲ)を意味する「Spina(スピナ)」やギリシア語で火花を意味する「Spitha(スピタ)」に由来して名付けられたとされています。
スピネルの和名も、同じニュアンスを込めたとおぼしい「尖晶石」です。
尖った感じを残したいい翻訳だと思います。

スピネルはカラーバリエーションも豊富で、レッドやブルー、ピンクなどに人気があります。
ピンクスピネルは値段もお手頃で、見栄えもよく入手しやすいです。


他にもカラーレス、グレー、ブラック、オレンジ、パープル、バイオレット、グリーンなど様々です。
ただ、一色だけ、イエローは自然にはほとんど見られないそうです。
アレキサンドライトのように光源によって色が変わるカラーチェンジスピネルもあります。

【君の名は 〜 レッドスピネル】
各色ある中で、最も知名度が高いのはレッドスピネルだと思われます。




レッドスピネルはクロムや鉄の影響で赤く発色すると考えられています。
ルビーの色もクロムの赤で、レッドスピネルと色がよく似ています。

ただし、レッドスピネルは単屈折で、ルビーは複屈折という光学特性の違いがあります。レッドスピネルの赤色はルビーのものより混じり気がなく、より濃く見えることから、注意深く見れば判別がつきます。

こうしたルビーとスピネルの識別は、比較的近年になってわかってきたことで、歴史上有名な美しいルビーのいくつかは、実はレッドスピネルであったことがわかっています。
その中で最も有名なものが、先日世界中の人の目に触れた英王室所有の宝飾品の中にあります。

黒太子のルビー
  140
カラットもある巨大なレッドスピネルです。英国王の王冠の中央にあしらわれています。



ティムール・ルビー

黒太子のルビーと同じく英王室が所有し、エリザベス女王のネックレスにあしらわれていた352.5ctの巨大なレッドスピネルです。
所有した6人の名前が刻まれているとの話がありますが、そうすると、先日物故されたエリザベス二世女王の名前も、そのうち刻まれることになるのかもしれません。


【硬派な輝き】
スピネルは、カット次第で、光を当てるとキラキラよく輝くようになります。
宝石がキラキラと輝く理由としては、前回お話ししたスファレライトなどのように屈折率や分散率が高い場合が第一です。

しかしスピネルは、屈折率や分散率はさほど高くありません。
にもかかわらずよく輝く理由の一つは、硬度が高いことでしょう。硬度が高い宝石は、カット面が鋭く、光の反射もエッジが立って見えます。
もう一点は、スピネルの表面が強いガラス光沢を持つことにあると思われます。カットが施されると、ファセット面に光が当たって光沢感が増し、それがキラキラ輝く印象につながっているようです。

 

スピネルには様々なカラーバリエーションがありますが、その要因は主に微量元素の違いによると考えられています。

ピンク、レッド系はクロム、

イエロー・褐色系は亜鉛やマンガン、

ブルー系には鉄やコバルト

が含まれています。

 

【コバルトガーナイト】

スピネルと同じ結晶構造をもつ金属酸化鉱物として、「ガーナイト」があります。

宝石としてのスピネルは、マグネシウムとアルミニウムを主成分としています。
ガーナイトは、このうちマグネシウムが亜鉛に置き換わった鉱物です。

ガーナイトの色は、ダークグリーン、ダークブルー、グレー、ブラック、褐色など、どちらかというと暗い色合いのものが中心で、従来はあまり注目されていませんでした。

そこへ2018年にアフリカで、鮮やかなコバルトブルーのガーナイトが発見されました。

 

ブルーの発色の要因は、ブルースピネルと同様に微量元素の鉄とコバルトですが、コバルトガーナイトと呼ばれるものには、コバルトが多く含まれ、相対的に鉄が少なくなっています。

鮮やかなコバルトブルーは衆目を集め、その稀少性と相まって、一躍人気の宝石となりました。

 

 

【合成スピネル】

スピネルは合成技術が確立されていて、多くの合成スピネルも市場に出回っています。
これらは成分が天然のスピネルと同じなので、見分けることが難しいことは合成コランダム(ルビー、パパラチャ、各色サファイア)と同様です。

天然と偽って販売するのはもってのほかですが、合成と割り切れば、天然物ではちょっとできないような大胆なカットなどの魅力を楽しむこともできるかと思います。

 

 

【ジェダイスピネル】  2023228日追記)

ジェダイスピネルとは、輝きが強く、汚れや暗さのないミャンマー(ビルマ)産の鮮やかなピンクのスピネルに与えられた商業名です。
ライトセーバーを振るうジェダイの騎士にちなんで命名されました。


(写真はAIGS THAILANDサイトから引用)

 

命名者は鑑別機関最大手のGIAで働くヴィンセント・パルデュー(Vincent Pardieu)氏です。
2000
年代の初め頃、ミャンマーに滞在していたパルデュー氏が、新しく売れ筋になりそうな宝石を探していた際に、新鮮なネオンカラーのスピネルを見つけました。
秘密保持のためにこれを関係者間で「ジェダイ」という符牒で表したのが発端でした。

2014年にパルデュー氏が、高品質でネオン感のある、ピンクから赤のスピネルについてGIAから報告書を公表した際に、符牒だった「ジェダイ」の名前で掲載したそうです。

その命名理由は、
「黒ずみがなく内包物もないクリアな赤ピンクのスピネルが、ダークサイドに堕ちることのない高潔なジェダイの騎士を連想させるから」

とのことです。

Wikimedia Commonsから引用)

光のジェダイ騎士、赤き光剣を閃かせ 闇を薙ぎ払う、といったところでしょうか。赤でいいのか、というツッコミは野暮なんでしょうね。
(※スターウォーズでは、赤いライトセーバーはジェダイ騎士団の敵であるシス卿のものとされ、ジェダイは使いません)


これについて、アジアの鑑別機関AIGSが、2021年にジェダイスピネルの鑑別基準を打ち出しています。
その主な条件は、

・彩度が高く、赤、赤紫、赤ピンク、オレンジ赤で、色合いが均一(黒や褐色の“ダークサイドの色”が噛んでいない)

・クラリティーは、肉眼で内包物が見えない“アイクリーン”以上

・トリートメントを施しておらず、プロポーション、カットも優れている

・ミャンマー産

といった内容です。

 

ジェダイスピネルは、既に中国で爆発的な人気を獲得しているそうです。
とは言え、日本市場への今後の浸透がどうなるかはまだわかりません。

すべては理力の導きのままに。

 

 

 

【本日のお散歩】(228日)

暖かく、よく晴れた一日でした。
散歩に誘うと飛び出しそうになるルビーを見ると、春も近いなという気分になります。

思ったより風が強くて、ルビーもときどき目を細めていました。