『ジルコン』
(宝石日誌第35回 (2022年10月6日)より)
ジルコンには、優秀なのに不遇という印象があります。
【地球最古の鉱物】
ジルコンは、ジルコニウム元素のケイ酸塩鉱物です。比較的簡単な条件で結晶化するようで、分布は世界中に広がっています。

モース硬度は6.5〜7.5となかなか硬く、屈折率は約1.8〜2.0と非常にきらめきが強いうえに、表面にはダイアモンドに似た光沢があります。カラーも豊富で、無色から青、赤、黄、褐色など主だった色はカバーしています。
和名は風信子(ヒヤシンス)石。これは、過去に赤褐色のジルコンをヒヤシンスと呼び習わしていたことにちなむそうです(諸説あり)。
ジルコンは、結晶内に放射性物質のウランを含むことが多いため、生成された年代を判定することが容易です(※)。
西オーストラリアで見つかったジルコンは、何と44億年前! にできたものだと判明しています。
地球の誕生が45億年前、最古の生命体の痕跡が37〜38億年前ですから、地球上の最初の生命よりはるかに古くから存在することになります。これはもう先達に経緯を表してジルコンパイセンと呼んでいいくらいです。
宝石としての力量に優れ、「地球最古の鉱物」という二つ名まで持ちながら、市場ではジルコンはあまり人気がありません。
その原因を探っていくと、ジルコンは不遇な石だなという思いにたどり着きます。
【ダイアのまがいもの?】
ジルコンの屈折率は2.0に近く、これはモアッサナイト、スファレライト、ダイアモンドに次ぐ高さです。
古くから知られた宝石の中ではダイアに最も近く、無色のジルコンはダイアの代用品として扱われることが多かったそうです。
そのためジルコンは、それ自体優れた性質を持つ宝石でありながら、「ダイアの代用品(まがいもの)」というイメージがつきまとうようになってしまいました。
まるで、なまじ才能があったために、有名画家の贋作ばかりを描かされた天才画家のような、不幸な運命をたどってしまったわけです。
【人造宝石?】
街角インタビューを行ったわけではありませんが、おそらく非常に多くの人が「ジルコン」と聞くと、キュービック・ジルコニア(CZ)のことだと誤解するのではないでしょうか。
CZの主成分も確かにジルコニウムではありますが、酸化ジルコニウムに他の元素を加えて結晶構造を強化した、自然界に存在しない人造宝石で、ジルコンとはまったくの別物です。
CZはまさに、「CZダイアモンド」や「ダイアモンド(CZ)」といった誤解を誘う表記のもと、ダイアの安価な代用品として大いに活用されています。
せっかくダイアの代用品という仕事から解放されたのに、名前がよく似た人工石が、もっと有名になってしまったために、結局ジルコンはダイアのまがいもの的イメージから脱却できなくなってしまいました。
「何でだよ、どうしてだよ」と皮肉な運命を嘆いているかもしれません。
あまり人気がない、とは書きましたが、ジルコンには豊富なカラーバリエーションとさまざまな個性があります。
【ブルージルコン】
ジルコンの中で最も定番の色です。
「ブルーサファイアの青に、ダイアのきらめきを併せ持った宝石」として、宝石をよく知る人たちからの評価が高いようです。

モルガナイトの名付け親であるティファニーのクンツ博士は、ブルージルコンに対して、特別に「スターライト」という名前を与えてはどうかという提案をしたそうです。
夜空の星の、冷たいような温かいような、冴えざえとして瞬く光にちなんだ実にロマンチックな命名だと思いますが、残念ながら定着しませんでした。
なお、ブルートパーズと同じように、ブルージルコンも、比較的大量に産出する褐色のジルコンを加熱して青く変色させたものが多いようです。
【レッドジルコン】
ブルーに次いで人気があります。
赤の色も一様ではなく、オレンジが噛んだ明るい赤から、少し黒みのある深い赤などさまざまなニュアンスの赤が見られます。

【イエロージルコン】
黄色系の宝石ではあまりないきらめきの強さが魅力です。
こちらも黄緑色から、オレンジの入った山吹色など、色合いに幅があります。

【その他の色】
他にもグリーンやピンク、オレンジ色など多彩な色があり、カラーレスにも一定の需要があるようです。

ジルコンは知名度が低く、人気がないことは否めないのですが、宝石としての美しさに疑問はなく、むしろ品質の割に価格があまり高くないというメリットがあります。
一度じっくりと眺めて、ご自身の趣味に合うかどうか確認する値打ちのある石だと思います。
(※)補足:放射年代測定法
放射性物質は、放射線を発しながらゆっくりと、より軽い元素に変わっていきます。
元素によって、一定の年数で変化する割合が決まっているので、変化前の物質と変化後の物質の割合を測るだけで、その結晶ができてからどのくらいの年数が経過したかを知ることができます。
ジルコンに含まれるウランの場合、約45億年で半分が鉛に変わります(半減期)。
仮に、あるジルコン結晶に含まれるウランと鉛の割合が3:1だった場合、最初に含まれていたウランの25%が鉛に変わったと判断できます。この場合、半減期から考えて、この結晶が生成された時期は、約18億年前であったと計算されます。
【本日のお散歩】
しばらく雨の予報です。雨量は多くないので、朝は傘を差してルビーと散歩に出ました。
ルビーはやはり外に出たのが嬉しいようで、ところどころ小走りになってました。
いつもより短めのパトロールで帰宅しました。
