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『ブルーダイヤモンド』 

宝石日誌第182回 (202373日)より)


最近カラーダイヤモンドと、YAGなどの昔のダイヤモンド類似石が面白くて、少しずつコレクションを増やしています。

その中で今日は、青いダイヤモンドを取り上げたいと思います。

 

 

1.ブルーダイヤの稀少性

 ダイヤには想像以上に多様な色がありますが、中でもブルーダイヤは、レッドダイヤと並んで、すべての宝石の中で最も高価な石の一つです。

 

 ダイヤモンドは自然状態ではほとんどが不透明な茶色や黒で、ごく一部の不純物の少ない部分が無色の宝石として高い価値をつけられています。

 この中でもごく稀に、透明度が高いのに美しい色のついた結晶があり、無色よりさらに稀少なカラーダイヤモンドとして、好事家の人気とお金を吸い上げています。

 

 世界一有名なブルーダイヤは、アメリカの国立自然史博物館(スミソニアン博物館の一つ)に収蔵されている、45.5ctのホープダイヤモンドです。

 

 宝飾業者のハリー・ウィンストンが寄付したダイヤで、持ち主に不幸をもたらす「呪いのダイヤモンド」として知られています。

 ただし、「女神像の目をかたどったダイヤを盗賊が盗み出したことで呪いが始まった(「ドラゴンランス戦記」の冒頭のようです)」とか、「持ち主が次々に非業の死を遂げた」などというのは、ダイヤの神秘性を高めるための作り話や、いいところこじつけに過ぎないようです。

 

 あるスミソニアン博物館のキュレーターによれば、最後の所有者のハリー・ウィンストンは、ホープダイヤが有名になって、どんどん呪いの逸話が増えていくのを面白がっていたきらいがあったとのこと。お化け屋敷を楽しむような心のゆとりが試されるのかもしれません。

 

 

 ジェームズ・キャメロン監督による映画「タイタニック」でヒロインのローズ(ケイト・ウィンスレット)がつけている首飾りの石も、作中では超大粒のブルーダイヤとされています。I

 

 

 なお、日本で「金銀パール プレゼント」とのCMが一世を風靡したこともあるようですが、少し別の話なので置いておきます。

 

 

2.発色の秘密

 青いダイヤモンドが生まれる仕組みは3つあると言われています。

 

 一つ目が、結晶の中に微量のホウ素(ボロン)が混ざり込み、青色を示すものです。

 このタイプは特にUb型(Uはローマ数字の2)と呼ばれ、南アフリカで産出し、ホープダイヤモンドもこれに属します。

微量のクロムで赤色を示すルビーなどと同じように、結晶自体に色が載ったもので、純粋な青を呈するのはこのタイプのみです。

 

  ダイヤ結晶が生成されるマントル深部にホウ素は存在しないはずなのに、なぜホウ素を含んだダイヤが生まれるのかは、ブルーダイヤの成分がわかって以来、長らく謎とされてきました。

 

 これについて近年、ホウ素は遙か数十億年の過去、古代の海底に沈澱したものが、プレートがマントルに沈み込むことに伴って、地中深く運ばれたものが起源ではないかとの、興味深い説が唱えられています。

(「20188GIAプレス発表」)

https://www.gia.edu/JP/gia-news-press/researchers-discover-origin-of-blue-diamonds

https://www.gia.edu/JP/blue-diamonds-have-surprise-origin-and-link-to-ocean

 

 この説のとおりであればこれは、地球のようにプレートテクトニクスが何十億年も稼働し続けた、活動的な惑星でしか生じ得ない現象だということになります。

 ダイヤモンド自体はかなりありふれた鉱物ですが、ブルーダイヤについては、真に宇宙レベルで稀少な宝石なのだと感じます。

 

 

 二つ目が、オーストラリアのアーガイル鉱山で産出した、微量の水素を含むことで紫色を呈するヴァイオレットダイヤです。

 青にも見える深い紫は、ピンクとレッドのダイヤで世界の注目を集めたアーガイル鉱山の評判をさらに高めるものでしたが、残念ながら同鉱山は2020年末に閉山しており、今後新たに市場に現れることはなさそうです。

 

 

 そして三つ目が、結晶の生成後に微量の自然放射線を受け続けたことにより、結晶構造の一部が欠損し、光の透過率が変わって、青緑に見えるようになったブルーグリーンのダイヤです。

 

 結晶の中の成分に色が付くのではなく、加熱や放射線などで外部からエネルギーが加わったことで、本来規則正しい結晶構造が一部欠損し「色中心(カラーセンター)」と呼ばれる箇所ができ、特定の波長の光を吸収するために色がついているように見えるものです。

 宝石には時々こういうことがあって、有名どころではアメシストの紫も同様の発色です。従って、アメシストを砕いても、粉末は紫になりません(ブルーダイヤで試した人はいないでしょうが)。

 

 ダイヤの結晶は非常にしっかりした格子構造になっていますが、その構造に欠陥が生じるパターンはいくつか知られており、中には特に色に影響しないものもあるとのこと。

 放射線の影響で、炭素原子の格子構造から炭素が一か所抜けたもの、あるいは、余分な炭素が格子構造の中にはまり込んだものなどが、青や緑を発色させるようです。

(参照:「CGL通信vol.43)

https://www.cgl.co.jp/latest_jewel/tsushin/43/70-2.html

 

 

3.Treatment(色改造)

 天然のグリーンダイヤの色中心(格子欠陥)は、結晶が天文学的な長期間にわたって自然放射線にさらされることによって生じますが、人為的に放射線を当てることによっても同じような発色が得られます。

 ダイヤの場合は照射処理も微妙で、必ずしも狙った結果を得られないことも多いようですが、人為的な処理でダイヤの色を変えることは可能です。

 このような処理を加えられた石は、処理済(Treated)石と呼ばれ、天然のものよりも大幅に価値は落ちるとされています。そして、処理(Treatment)の中でも、放射線☢️照射は、人為的な放射線の影響か自然放射線の影響かを見極めるのが極めて難しく、ナチュラルかトリーティッドかの鑑別のブレが生じることがあります。

ブルーグリーンダイヤのトリートメントの判定については、ここ1週間ほど、SNSでちょっとした騒動になっています。

 

 なお、放射線照射のトリートメントを行ったからといって、天然石が人工石に変わるわけでもなく、価格以外の宝石としての価値はむしろ上がります。

 現に放射線照射で青く色づいたブルートパーズは、何の留保もなく市場に出て、ジュエリーショップで人気を博しています。

 トリートメントによって、一生見ることができないような美しい色のダイヤを、身近に楽しむことができることを考えると、トリートメントダイヤの地位はもう少し高まるのが自然だと個人的には思っています。

 私自身もブルー、イエロー、グリーンのトリートメントダイヤをかなり安価に手に入れ、身近に置いて楽しんでいます。

 次は、ピンクダイヤで、いい出物があればほしいなと思っています。

 

 

 

 

【散歩とか】

日中はもう夏のようですね。

幸い夕方からは風も出て、家族で散歩に出るとルビーもはしゃいでくれました。