『国際宝飾展』
(2022年10月29、30日の日記より)
10月28日に、秋の国際宝飾展(パシフィコ横浜)に行ってきました。
宝石に関するセミナーを受講し、その後会場内のブースを見てまわりました。
セミナーの概要と、当日の戦利品などについて、簡単にご報告します。


【セミナーについて】
10:30〜11:30に「色石の“魅力”と“楽しさ”」のセミナーを受講しました。

講師は、宝石商で(株)ミタルズ代表取締役のカピル・ミタルさんです。
この方は以前、「マツコの知らない世界」というTV番組で、宝石のレアストーンをテーマにした回のときに、説明役を務めたそうです。
会計士の資格を持っていて、インドの宝石販売会社に会計業務担当で就職したものの、商品である色石(カラーストーン)の魅力にはまってしまい、社長に頼み込んで会計から宝石販売に異動させてもらった(ちなみに給料は激減)そうです。
セミナーでは、カラーストーンに対するカピルさんの思い入れや、鉱山の現況、今後の供給の見込みなどについて、質の高い情報を、情熱をこめて語っていただきました。
お話の内容について、宝石別に以下のとおりまとめました。
1.タンザナイト
カピルさんが会計士として仕事をしていたときに、隣の部屋で机の上一面にタンザナイトを並べて作業しているのを見て、この仕事は面白そう、と思ったそうです。
宝石商にクラスチェンジするきっかけとなった石ということでしょうか。
宝石販売に仕事を変えて何年か経ったときに、暑熱のタンザニアのメレラニ鉱山を訪ねたことがあるそうです。
キリマンジャロのふもとで、夕暮れどきに見上げた空は深い青で、まさにタンザナイトの色だった、と思い出を語られました。
タンザナイトは人気があり、宝石業者間の競争も激しいので、比較的安定した値動きながら、数十年にわたって着実に価格が上がっているとのことでした。
過去に価格の下落があったのは、911同時テロ、2008年金融危機、直近のコロナショック時の3回しかないそうです。
そして現在は、既にコロナ前の価格に戻っているそうです。極端な値上がりがないので、今からでも買い時ではないかとのご意見でした。
2.デマントイドガーネット
ロシアのウラル山脈近くで、ー25℃の極寒の中で買い付けに行ったときのこと。日中買い付けたデマントイドを選別しているときに、一つを床に落としてしまったそうです。
それをひょいと絨毯から拾い上げようとしたとき、ふと差し込んだ光を受けて輝いたそのデマントイドの照りと深い色合いの美しさに、一瞬にして心を奪われたそうです。
それから何年も過ぎた今でも、そのときの輝きは胸に残っているとのことでした。
言ってみれば、宝石商としての仕事の原体験の一つになっているのかなと、お話を聞いていて思いました。
3.マスグラバイト
マスグラバイトは稀少石中の稀少石です。
スピネルの変種のような鉱物ですが、通常のスピネル100万の中からようやく1つ見つかるかどうかというくらい珍しいものです。
カピルさんも自分用に一つ探したそうですが、やっと手に入ったときには5年が経っていたそうです。
グレーの中に紫が浮かぶ神秘的な表情と、強い輝きが魅力で、大好きな石だと語られていました。
マツコさんの番組で紹介したレアストーンの中で、マツコさん本人が一番気に入ったのもマスグラバイトだったそうです。
なお、セミナーでカピルさんは「今日の宝飾展の会場全部を探しても、1個見つかるかどうか」とおっしゃられましたが、その後のブース巡りで、一つ見つけました。
懇意にさせていただいているニミットジェムスさんのところで、なんと1カラットプラスのものがあったものです。買いませんかと声をかけていただいて心が動きましたが、涙を飲んで見送りました。
4.パライバトルマリン
宝石界の中でもその人気は一二を争います。
市場で売り出されてからまだ30年くらいですが、最初のブラジルの鉱山からの品質の高い石の産出は、数年と経たずに尽きてしまいました。
その後他の鉱山からも発見されて供給は続いているものの、品質面では最初の鉱山に届かないのが現実です。
品薄を補う必要もあって、最初の頃であれば売れなかったような、内包物が多かったり、若干のヒビがあったりする難ありのものも、一定の加工を行ったうえで市場に出している状況だそうです。
折しも最近になって、従来パライバについては一部の鑑定機関しかコメントをつけていなかった、ヒビをオイル等で埋める「含浸処理」について、業界として記載を義務づけるべきではないかという議論が持ち上がっているそうです。
オイル含浸はエメラルド等では当たり前で、そのことで価値が劣るものではないのですが、パライバを持っているお客さまが
「自分の石も含浸済かもしれない。そうすると価値が下がってしまうのか?」
といった不安を持つことが予想されます。
そのためカピルさんとしては、お客さまを不安にさせないよう、丁寧に進めていくことを望んでいる、と話されていました。
パライバはここ数年で値段が何倍にもなっているそうです。
実は、ほぼ枯渇したと思われた最初の鉱山を、インドの会社が買い取って、数年かけて調査・試掘を行ったそうなのですが、結果は思わしくなかったとのことです。
この先また新しい鉱山が見つかりでもしない限り、供給は先細りになる一方なので、いずれ手に入れたいと思っている方は早めに決断した方がいいでしょうとのことでした。
5.アレキサンドライト
変色性が強く、クラリティ(透明度)も高い良質のアレキサンドライトは、ここ数年で価格が倍になっているそうです。
特にこの数か月は、海外での買付価格がドル建てで30〜40%上がっているうえに、急激な円安で円換算でさらに30〜40%上がってしまうため、それだけでも価格はほぼ倍になってしまう由でした。
産出が近いうちに底をつくようなおそれはないものの、価格の一層の上昇が予想されるので、パライバと同じく、手に入れるなら急いだ方がいいとのご意見でした。
6.ベニトアイト
唯一の鉱山は既に閉山しています。あと1〜2年は過去に採掘したストックが流通すると思うものの、その後の供給が続く保証はないとのことでした。
新規供給が完全にストップする可能性が高く、小粒でも高価な石という位置付けは変わらないだろうとのことです。
私も好きな石なので、歴史上の幻のように消えてしまうとすれば残念です。
7.モンタナサファイア
2年前の国際宝飾展のセミナーで、これから人気が上がる石として紹介されたそうです。確かに、予想のとおり人気が高まっています。
この石は幸いまだ採掘が続いており、色が良くクラリティも高い良質なロットが多く市場に出回っているので、美しく心躍る石をじっくり選ぶべきです、とのことでした。
8.ロードナイト
よくある半透明のものと違う、透明度の高い宝石質のものは、問題なくジュエリーに使えるとのことです。
数年前に大量に採掘できたので、今のところ当時の在庫が流通しているが、将来の供給は不透明だとのことでした。
9.アマゾナイト
半透明で安価な石ではあるものの、パライバトルマリンにも似た明るい青の色合いは、集めてみる値打ちがあるだろうとのことでした。
上記の他に、今後人気が上がりそうな石として、「ベキリーブルーガーネット」、「カラーチェンジガーネット」と「ミントトルマリン」を挙げられました。
◯宝石を売るということ
カピルさんは、宝石を買いたいと思ったときに大事なことは、「無理をしないこと」だとおっしゃっていました。
「宝石は市場価値を買うのではなく、思い出を買うものだ」というのがカピルさんの持論だそうです。
買う前にワクワクし、ようやく手に入れたときには、その喜びが宝石自体とともに何十年も思い出に残る、といった出会い方をしてほしいのに、無理して買って後悔の念が生じるようでは本末転倒だと。これには私もまったく同感です。
宝石には決まった相場がなく、何に価値を見出すかは人によって異なるので、「安く売ります」という考え方には自ずと限界があります。
カピルさんは宝石商として
「お客さまにフェアバリューで宝石を提供し、楽しくワクワクする思い出を作ってもらう」
ことを大事にし続けたいとのことでした。
たった1時間のセミナーでしたが、いいお話が聞けて、なかなか充実した時間でした。
セミナー終了後は、持参したおにぎり🍙を食べてから、会場を回りました。

i
【全体の雰囲気】
出展一覧を見たときの印象として、真珠販売のブースが、他の宝石関係のイベントに比べて多いように思いました。
全体の2〜3割を占めているようで、もし前年より増えているとすれば、真珠については円安のプラス効果が出始めているのかもしれません。
また、9月にジャパンジュエリーフェアに行ったときも思ったのですが、出展者もお客さんも、アジア系の方たちが元気よく賑やかな雰囲気を醸し出しているのが印象に残りました。
今後日本人の強みとして残るものは何でしょうかね。
とても全体を回れる規模ではないので、出展図を見て、知っているところや、気になった店を訪ねました。
【色石の相場】
午前中の講師のカピルさんが代表をされている(株)ミタルズのブースに行くと、美しい色石が並んでいました。
カピルさんが「早めに購入するべき石」として挙げていたパライバトルマリンとアレキサンドライトの品揃えも充実しています。
パライバトルマリンは先月までに質の良い石を購入できたので、今の第一のターゲットはアレキサンドライトになります。
ドル建て調達価格の値上がりと円安のダブルパンチで色石の価格が急騰しているとのことでしたが、アレキサンドライトについては特に影響が顕著だそうです。
あまり価格を書くのは控えていたのですが、何社か確認した感じでの一般論としては、良質のアレキサンドライトの価格は、おおむね1カラット当たり200万円±1〜5割 といったところのようです。
色石に決まった基準はなく、色、透明度、カラット、光学効果などの優先順位も人によって異なります。
すべてに高水準を求めず、一部の要素を妥協すれば、金額もリーズナブルなものに近づくことと思います。
今の時期は一つの節目かもしれませんので、しばらくウォッチを続けたいと思います。
【本日の戦利品】
手元のコレクションにない種類や同じ色がない石で、安く売られていたものがあれば適宜購入しています。

【本日のお散歩】
2日続けて晴天です。
空気はそこそこ冷たいのでルビーに薄手のセーターを着せましたが、日向にずっといると暑いくらいです。


家では日向ぼっこしてました。
